令和6年12月23日、長野地方裁判所は、妻を殺害したとして起訴されていた元長野県議会議員の丸山大被告人に対し、懲役19年の実刑判決を言い渡しました。本件は、直接証拠が乏しい中、多数の間接証拠を積み重ねて被告人を犯人と認定した点が大きな特徴です。

【基本情報】事件の発生日時・場所・被害者
- 発生日時:令和3年9月29日未明
- 発生場所:長野県塩尻市・被告人宅兼会社事務所
- 被害者:被告人の妻(当時47歳)
- 死因:頸部圧迫による窒息死
被害者は自宅1階の事務室で死亡しているのを家族に発見されました。
【争点】被告人が犯人と認定できるかが最大の焦点
本件の争点は、「被告人が犯人であると認められるかどうか」でした。殺害自体や死因については争いがなく、第三者による犯行か、被告人による犯行かが審理の中心となりました。
【証拠①】防犯カメラ映像が示した被告人車両の動き
裁判所は、複数地点の防犯カメラ映像を詳細に分析しました。
- 被告人が所有・使用していた車両(トヨタ・アイシスプラタナ)と極めて特徴が一致する車が、
- 事件前夜に議員宿舎付近を出発
- 事件時間帯に現場周辺を走行
- 事件後に再び議員宿舎付近へ戻る
という一連の移動をしていたことが認定されました。
裁判所は「偶然の一致とは考え難い」と判断しています。
【証拠②】近隣住民の目撃証言と事件当時の状況
事件当日午前3時過ぎ、現場近くで男性が車のハッチバックを開けている姿を目撃した住民の証言がありました。
- 時刻
- 車両の特徴
- 人物の体格
はいずれも、防犯カメラ映像や被告人の行動と整合すると評価されました。
【証拠③】現場状況・足跡から否定された第三者犯行説
事務所内には
- 外部侵入者を装ったような土足跡
- 現金が一部だけ抜き取られた手提げ金庫
が残されていましたが、
- 他に物色の形跡がない
- 被害者が激しく抵抗した痕跡がない
ことから、裁判所は「外部の窃盗犯による犯行は不自然」と判断しました。
また、土足跡は被告人が日常的に使用していたテニスシューズと特徴が一致する可能性が高いと認定されています。
【動機】不倫関係・政治的立場が与えた影響
裁判所が重視した動機は以下の点です。
- 被告人は長年、不倫関係にあった女性との復縁を強く望んでいた
- 離婚は政治活動や経済面で大きな不利益があった
- 妻が死亡すれば、これらの障害が一挙に解消され得る状況にあった
妻の死亡後、間もなく不倫相手に再接近していた行動も、不自然さを裏付ける事情とされました。
【判決内容】懲役19年とされた理由
裁判所は、
- 車両の移動状況
- 目撃証言
- 現場の痕跡
- 動機
を総合評価し、「被告人が妻を殺害したと認めるのが合理的」と判断しました。
第三者犯
行説は、いずれも現場状況と整合せず、排斥されています。
【判決の意義】間接証拠による有罪認定が示すもの
本判決は、
- 直接証拠がなくても
- 科学的分析と状況証拠を積み重ねることで
有罪認定が可能であることを示した事例です。
今後の刑事裁判における「間接証拠の評価」のあり方を考える上でも、注目される判決といえます。

コメント