2025年9月17日、福岡地方裁判所第2刑事部は、福岡県弁護士会所属の元弁護士・小山格被告に対し、懲役8年(未決勾留日数240日算入)の実刑判決を言い渡しました。

本件は、弁護士という立場と専門知識を悪用し、依頼者や企業から金銭をだまし取る・預り金を流用するという犯行を繰り返した重大事件です。
被害者6名、被害総額は約7,680万円にのぼります。
▶ 判決全文(一次資料)
本記事は判決文に基づき作成しています。
事実認定や量刑理由の詳細は、以下をご参照ください。
本件の特徴|弁護士の信用を利用した「二重構造」の手口
本件の手口は大きく分けて2類型あります。
- 裁判手続を装った供託金詐欺型
- 預り金の横領型(業務上横領)
さらに悪質なのは、「嘘を補強するための偽文書」「過去の依頼情報の悪用」が組み合わされている点です。
以下、具体的に解説します。
① 仮差押決定書を偽造した供託金詐欺
■ 具体的な流れ
- 依頼者に「仮差押命令を申し立てる」と説明
- 「供託金850万円が必要」と告げる
- 裁判所書記官印があるかのように装った
“仮差押決定書”の写しデータを送信 - 「入金され次第直ちに供託する」と約束
- 指定口座へ振込させる
- 実際には供託せず私的流用
▶ 裁判書式を使い、真正文書であるかのように装った点が決定的でした。
② 株式売買代金約1,941万円の横領
■ 手口の構造
- 株式売買契約交渉を受任
- 売買代金が弁護士口座へ振込
- 「依頼者のために預かっている状態」を利用
- 6回に分けて現金を払い戻し
- 私的用途へ流用
ここで争点となったのが「委託信任関係」の有無です。
裁判所は、
- 委任状の存在
- 継続的契約関係
- 交渉経緯の証拠
をもとに、明確に委任関係を認定しました。
③ 和解金・登記費用・弁済資金の横領
他の横領事案も基本構造は同じです。
共通する手口
- 訴訟・交渉・和解を受任
- 相手方から和解金が振込
- または依頼者から費用名目で受領
- 預り金として保管すべき立場
- 即日または数日以内に引き出し流用
特徴は「短期間での引き出し」です。
供託・支払いの形跡はありませんでした。
④ 追加供託名目で170万円を詐取
すでに横領済みであるにもかかわらず、
- 「利息が発生している」
- 「遅延損害金が必要」
- 「今日中に供託する」
と説明。
虚偽の回答書を示して信用させ、さらに現金170万円を交付させました。
▶ 既に着服済みであることを隠す“穴埋め型詐欺”です。
⑤ 企業を欺いた代理人なりすまし詐欺
■ 手口
- 実際には依頼を受けていないのに
- 「代理人受任通知書」をFAX送信
- 管理費・返還請求名目で支払い要求
- 自身の口座へ振込させる
企業側担当者を誤信させ、
合計約1,490万円を振込させました。
⑥ 不倫スキャンダルを捏造した865万円詐欺
最も悪質と評価されたのがこの事案です。
■ 手口の流れ
- 過去に依頼を受けた顧客へ連絡
- 「元不倫相手の配偶者が慰謝料請求している」
- 「ニュースサイト掲載の動きがある」
- 「差止め仮処分の供託金が必要」
- 現金865万円を受領
実際には、
- 慰謝料請求は存在せず
- 記事掲載の動きも存在せず
完全な虚偽でした。
▶ 依頼者のプライバシー情報を利用した心理的圧迫型詐欺です。
裁判所の評価|「弁護士にあるまじき犯行」
裁判所は量刑理由で、
- 弁護士の専門知識の悪用
- 被害者の信頼を逆手に取った点
- 嘘を重ねる常習性
- 被害総額の大きさ
を強く非難しました。
市民の権利を擁護すべき弁護士にあるまじき卑劣な犯行
と明言し、懲役8年の実刑を言い渡しました。
求刑も懲役8年であり、求刑通りの判決です。
本件の法的ポイント
■ 業務上横領の成立
- 委任状
- 実際の交渉経緯
- 継続的関係
があれば委託信任関係は成立。
報酬控除も否定されました。
まとめ
本件は、
✔ 偽文書を使った供託金詐欺
✔ 預り金の計画的横領
✔ 代理人なりすまし
✔ プライバシー悪用
という複合型犯罪です。
弁護士制度への信頼を根底から揺るがす事件として、
重い実刑判決が言い渡されました。
詳細は一次資料をご確認ください。


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