殺意・共謀・量刑が争われた日本刀殺人未遂事件の概要【徳島地裁判決】
令和7年11月14日、徳島地方裁判所は、日本刀を用いて被害者の腹部や胸部を複数回突き刺した殺人未遂事件について、清谷孝之被告(59)に懲役12年の実刑判決を言い渡しました。
本件では、
① 清谷孝之被告に殺意があったか
② 複数人による共謀が成立するか
③ 量刑はどの程度が相当か
が主要な争点となりました。
日本刀の使用態様から認定された殺意と量刑判断の前提事情
清谷孝之被告が使用したのは、刃体の長さ約69cmにも及ぶ日本刀でした。
被害者は無防備な状態であり、腹部・胸部といった生命に直結する部位を狙って複数回突き刺されています。
裁判所は、この犯行態様自体が極めて死亡の危険性が高い行為であると評価しました。
日本刀による攻撃が殺意認定に直結した理由
裁判所が殺意を認定した理由は、次の点にあります。
- 日本刀は殺傷能力が極めて高い凶器であること
- 腹部・胸部など致命部位を狙っていること
- 刺創はいずれも深く、強い力で刺されていること
これらの事情から、裁判所は
「人が死亡する危険性を認識しながら行為に及んだ」
として、被告人に未必の殺意があったと判断しました。
共謀の成立が殺人未遂認定と量刑に与えた影響
本件は清谷孝之被告単独の犯行ではなく、複数人が関与しています。そのため、共謀共同正犯が成立するかが重要なポイントとなりました。
裁判所は、犯行前後の一連の流れを総合的に検討しています。
事前準備と現場状況から認定された共謀の実態
裁判所が共謀成立を認めた根拠は以下のとおりです。
- 事前に武器を準備するよう指示が出ていた
- 被告人は日本刀を持参して現場に赴いている
- 現場で「行け」との指示があり、直後に暴行が始まっている
これらの点から、裁判所は
殺人未遂という結果が生じ得る行為について意思の連絡があった
として、殺人未遂の共謀成立を認定しました。
殺意・共謀を前提とした量刑判断の考え方
検察官は懲役15年を求刑しましたが、裁判所は最終的に懲役12年が相当と判断しました。
量刑判断では、犯行の悪質性と清谷孝之被告有利な事情の双方が考慮されています。
量刑を重くした事情と軽減要素(殺意・共謀との関係)
量刑を重く評価した事情
- 強い殺意が認定された点
- 日本刀による危険な犯行態様
- 被害者に重大な後遺障害が残った点
- 共謀により犯行が実現した点
一方で考慮された事情
- 殺意が未必的にとどまること
- 組織的犯罪とまではいえないこと
- 被告人が警察に出頭していること
これらを総合し、懲役12年という量刑が導かれました。
まとめ|殺意・共謀・量刑を総合判断した判決の意義
本判決は、
「凶器の危険性」「攻撃部位」「複数人による関与」
が、殺意認定および量刑判断に直結することを明確に示しています。
この判決から分かるのは、
「結果として死亡しなかった」
「本人が殺すつもりはなかったと主張している」
といった事情だけでは、刑事責任が軽くならないという点です。
凶器の種類や行為の内容、複数人の関わり方次第では、
殺意・共謀が認定され、重い量刑が科される可能性があることを示した、実務上も参考になる判決といえるでしょう。


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