📅 令和4年(2022年)12月26日 | ⚖️ 最高裁判所第二小法廷 | 📂 令和3年(受)第1115号 離婚等請求本訴、同反訴事件
🔄 最終更新:2026年10月10日(Q&A形式に全面リニューアル)
⏱ 30秒でわかる結論
- 財産分与で、一部の財産だけ「保留」にすることはできません。離婚と一緒に財産分与を求めたなら、夫婦で築いた財産は全部まとめて判断されます。
- 評価が難しい財産でも同じです。今回は夫婦で設立した医療法人の出資持分でしたが、二審が判断を先送りしたことを最高裁は違法としました。
- 結果は差し戻し。財産分与の部分を破棄し、東京高裁でやり直しとなりました。
Q1. どんな夫婦の、どんな争いだった?
A. 結婚後に夫婦で出資して医療法人を作った夫婦の離婚で、その「出資持分」をどう分けるかが争われました。
夫婦の一方が離婚を求めて提訴し、もう一方も反訴で離婚を求めました。双方とも、離婚とあわせて財産分与を申し立てています。
夫婦は婚姻後、ともに出資して医療法人を設立していました。この出資持分は、夫婦が婚姻中に協力して得た財産として、財産分与の対象とされていました。
話を複雑にしたのが、医療法人が夫婦の一方(上告人)に対し、財産の横領などを理由に約1億5767万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていたことです。二審の時点で、この訴訟はまだ続いていました。
Q2. 二審はなぜ出資持分を「保留」にした?
A. 損害賠償の裁判が続いていて、今は貢献度を測れないと考えたからです。
二審の東京高裁は、出資持分が夫婦の協力で得た財産であることは認めました。そのうえで、上記の訴訟が続いていることなどから、医療法人への貢献度をいま推し量り、分与の割合や額を決めるのは相当でない「特段の事情」がある、と判断しました。
その結果、出資持分を除いた残りの財産についてだけ財産分与を決め、出資持分については判断しませんでした。一審は出資持分を含めた全部について判断していたので、二審で範囲が狭まった形です。
第一審
出資持分を含む全財産について財産分与
離婚は双方の請求とも認容(離婚部分はその後争われず)。
控訴審 東京高裁
出資持分だけ判断せず「保留」
残りの財産についてのみ財産分与の裁判をした。
上告審 最高裁第二小法廷 2022年12月26日
財産分与の部分を破棄し、東京高裁へ差し戻し
一部を判断しないことは許されないと判断(裁判官全員一致)。
Q3. 最高裁は何を根拠に「保留はダメ」としたの?
A. 法律の条文が、財産の「全部」について判断することを前提にしているからです。
最高裁は、民法768条3項と人事訴訟法32条1項の文言から、離婚に付けて財産分与が申し立てられた場合は、夫婦の協力で得た財産の全部について裁判をすることが予定されていると読みました。一部を省いてよいという規定はありません。
加えて、財産分与は夫婦の実質的な共同財産を清算して分ける制度で、速やかな解決が求められます。人事訴訟法も、離婚と財産分与を同じ手続きで同時に解決させる趣旨だと指摘しています。
——最高裁第二小法廷 令和4年12月26日判決の判断の要旨
そのうえで、二審が出資持分について判断しなかったのは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反だと結論づけました。

Q4. 自分の離婚に、この判決はどう関係する?
A. 「評価が難しい財産があるから後回し」で話を進めると、手続きがやり直しになりうる、という教訓になります。
医療法人に限らず、夫婦で営む会社の株式や持分、事業用の不動産など、値段をつけにくい財産は珍しくありません。今回の判決は、そうした財産こそ最初から分与の対象に含めて、きちんと評価する必要があることを示しています。
実際この事件は、二審の判断から最高裁を経て東京高裁でのやり直しになりました。先送りした分だけ、決着までの時間と費用が膨らむのは、当事者にとって大きな負担です。家族で事業をしている人ほど他人事ではないと感じました。
| この判決が示したこと | この判決が判断していないこと |
|---|---|
| 離婚と一緒に財産分与を求めたら、協力して得た財産は全部判断しなければならない | 医療法人の出資持分をいくらと評価するか、どう分けるか |
| 別の裁判が続いていることは、判断を省く理由にならない | 横領などをめぐる損害賠償訴訟の結論 |
⚠️ 財産分与で損をしないために
- 会社の株式・出資持分、事業用資産も含めて、夫婦の財産を一覧にしておく
- 評価が難しい財産ほど、早めに決算書や評価資料をそろえる
- 家族で事業をしている場合は、離婚の話し合いの初期から弁護士に相談する

よくある質問(FAQ)
Q. 財産分与の対象になるのはどんな財産ですか?
A. 婚姻中に夫婦が協力して得た財産です。今回のように、婚姻後に夫婦で出資して設立した医療法人の出資持分も対象とされました。
Q. 裁判所が一部の財産だけ判断しないことはありますか?
A. 離婚請求を認める際に、離婚に付けて申し立てられた財産分与について、協力して得た財産の一部を判断しないことは許されない、と最高裁は判断しました。
Q. この事件の最終的な分与額は?
A. 最高裁は財産分与の部分を東京高裁に差し戻したため、判決の中で金額は示されていません。
📌 この判決のポイントまとめ
- 離婚に付けて財産分与が申し立てられたら、協力して得た財産の全部について判断しなければならない。
- 医療法人の出資持分だけを「保留」にした東京高裁の判断は、法令違反とされた。
- 別の損害賠償訴訟が続いていることは、判断を省く理由にならない。
- 財産分与の部分は破棄され、東京高裁に差し戻された(裁判官全員一致)。
まとめ:評価が難しい財産ほど「先送り」は許されない
夫婦で事業を築いてきた場合、その事業の持分は最も大きく、最も分けにくい財産になりがちです。だからこそ二審は判断を先送りしましたが、最高裁は「全部まとめて決める」という原則を崩しませんでした。
離婚は家族にとって大きな節目です。後から手続きがやり直しにならないよう、財産の洗い出しと評価を早めに進め、専門家の力を借りることが、結局は自分と家族を守る近道だと感じます。
出典・参考資料
【免責事項】本記事は、公開されている判決文をもとに作成したもので、法的助言を目的としたものではありません。具体的な事案については弁護士等の専門家にご相談ください。
書き手:kota(カオスな世界 管理人)|判決文や公的資料などの一次資料をもとに、家族と暮らしを守る視点で解説しています。



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