【熊本地裁判決】B型肝炎訴訟の和解金約9329万円を横領、元弁護団代表・内川寛被告に懲役6年|被害者のお金が5年・170回で消えた手口

B型肝炎訴訟の和解金を元弁護団代表が横領した事件を示すアイキャッチ画像 刑事事件
弁護士の不祥事熊本地裁業務上横領B型肝炎訴訟預り金

📅 令和7年(2025年)8月28日 | ⚖️ 熊本地方裁判所刑事部 | 📂 令和7年(わ)第64号、第107号、第170号 業務上横領被告事件

集団予防接種でB型肝炎に感染した被害者の救済に取り組む「全国B型肝炎訴訟熊本弁護団」。その代表弁護士だった内川寛被告(63)が、国から支払われた和解金を管理する口座から、約5年間・170回にわたり計約9329万円を横領していました。

熊本地裁は「弁護士による業務上横領事案の中でも高額」で被害の大部分が回復していないとして、懲役6年(求刑8年)の実刑を言い渡しました。

📄 熊本地裁判決全文(PDF)はこちら →

事件の概要|被害者に渡るはずの和解金を私的に流用

B型肝炎訴訟では、被害者が国と和解すると、病状に応じた給付金が支払われます。弁護団はその和解金を預かり、被害者に届ける役割を担っていました。

内川被告は弁護団代表として、和解金を保管する口座を管理していました。判決によると、2018年5月から2023年6月まで、この口座から繰り返しお金を引き出し、合計約9329万円を自分のために使っていました。

横領の手口|3つの時期に分けて170回

期間 回数 横領額 主な使い道
2018年5月〜12月 12回 約368万円 他人名義の11口座へ入金
2019年1月〜2020年12月 76回 約3995万円 市県民税の納付
2021年1月〜2023年6月 82回 約4966万円 他人名義の18口座へ入金
合計 170回 約9329万円

発覚を防ぐための細工もしていました。上部団体に対して和解の件数を少なく、被害者の病態区分を軽く報告し、送金する額を減らして、その差額を横領していたのです。

判決は、弁護団の会計に十分な監査体制がなく、今後も原告となる人が現れるため預り金を長く精算しないで済む状況を、被告人が利用していたと指摘しています。

「被告人は、弁護団に所属する他の弁護士から信頼され、弁護団の会計について監査体制が十分に整えられていない上、B型肝炎訴訟の原告となり得る者が今後も現れることから相当期間にわたって弁護団の預り金を精算することもなく」
——熊本地裁判決より

判決|懲役6年、「被害の大部分は回復されていない」

2018年5月〜2023年6月

💴 170回・約9329万円を横領

法律事務所の経費や住宅ローン、生活費の支払いに困っていたことが動機とされました。

〜2025年8月

📂 弁護士会を退会

熊本県弁護士会は、判決時点で元会員はすでに退会していると説明しています。

2025年8月28日 熊本地裁判決

⚖️ 懲役6年(求刑8年)

未決勾留日数130日を刑に算入しました。

「被害総額は弁護士による業務上横領事案の中でも高額であり、令和4年に自らに対する報酬相当額420万円を弁護団の口座から出金せずに放棄した旨の被告人供述を考慮しても、被害の大部分は回復されておらず」
——熊本地裁判決より

裁判所は、5年間に170回という常習的な犯行で、動機に酌むべき事情はないと判断しました。反省の言葉などを考慮しても、実刑は免れないとしています。

長年病気に苦しんできた人たちの救済のためのお金が、救済の先頭に立つべき弁護士に使い込まれていた。読んでいて、やりきれない思いがします。

弁護士会の対応

熊本県弁護士会は判決当日、会長談話を出しました。事件について「弁護士に対する社会的な信用を著しく毀損するもので、極めて遺憾」とし、会員の綱紀粛正と信頼回復に努めるとしています。

弁護士にお金を預けるとき、家族で確認したいこと

相続や交通事故の示談金、離婚の財産分与など、弁護士に大きなお金を預ける場面は誰にでも起こりえます。ほとんどの弁護士は誠実に業務をしていますが、自分の身を守るための確認はしておきたいところです。

01

預り金の状況を確認

和解金や示談金が入ったら、いつ・いくら受け取ったかを弁護士に書面で確認します。

02

精算の時期を決めておく

「いつまでに、いくら振り込まれるか」をあらかじめ確認し、遅れたら理由を聞きます。

03

不審に思ったら弁護士会へ

各地の弁護士会には市民窓口があり、弁護士の対応についての苦情や相談を受け付けています。

⚠️ 弁護士の横領被害に遭ったら

  • 所属していた弁護士会の相談窓口に連絡する
  • 日本弁護士連合会には、弁護士の横領による被害者に見舞金を支給する制度がある(要件あり)
  • 別の弁護士に依頼して、損害賠償請求などを検討する

📌 この判決のポイントまとめ

  • 熊本地裁は2025年8月28日、全国B型肝炎訴訟熊本弁護団の元代表・内川寛被告に懲役6年を言い渡した。
  • 2018年5月〜2023年6月、和解金の管理口座から170回にわたり計約9329万円を横領した。
  • 上部団体に和解件数や病態区分を偽って報告し、送金額を減らして差額を着服していた。
  • 裁判所は弁護士による横領としても高額で、被害の大部分が回復していないと指摘した。

まとめ|「信頼」に頼りきった会計の危うさ

この事件は、仲間の弁護士からの信頼と、監査の仕組みの弱さが重なったところで起きました。弁護士個人の問題であると同時に、預り金を誰がどう確認するのかという仕組みの問題でもあります。

依頼する側としても、「先生に任せておけば安心」で終わらせず、お金の流れは自分でも確認する。それが、家族の大切なお金を守る一番の方法だと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 内川寛被告の判決は?

A. 2025年8月28日、熊本地裁で懲役6年(求刑懲役8年)の実刑判決が言い渡されました。

Q. 横領された和解金は被害者に戻るのですか?

A. 判決は、被害の大部分が回復されていないと指摘しています。被害の回復は、刑事裁判とは別の民事上の手続きなどによることになります。

Q. 弁護士に預けたお金が心配なときはどうすればいいですか?

A. まず担当弁護士に入金状況と精算時期を書面で確認してください。対応に不安があれば、所属する弁護士会の市民窓口に相談できます。

出典・参考資料

【免責事項】本記事は、判決および報道等の公開情報をもとに、事件と裁判の内容を一般向けに解説したものです。記事中の事実関係は裁判所の認定や報道の範囲によるもので、判決が確定していない事件については、有罪が確定するまで被告人は無罪と推定されます。個別の法的判断は弁護士等の専門家にご相談ください。

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