【千葉県】M’sクリーンに業務停止9か月|「ガス会社の点検」装い平均58万円の給湯器・床下工事、5つの手口と返金・家族の守り方

ガス会社を装う無料点検業者に業務停止9か月(千葉県の特定商取引法処分)を示すアイキャッチ画像 消費者被害・詐欺
特定商取引法業務停止命令点検商法給湯器・床下工事クーリング・オフ

📅 令和8年(2026年)4月17日 | ⚖️ 千葉県(環境生活部くらし安全推進課) | 📂 特定商取引法 第8条・第7条・第8条の2に基づく処分

「ガス給湯器の点検時期です」――電話や封書でガス会社を思わせる案内を出し、無料点検の名目で高齢者宅に上がり込んでいた横浜市の事業者に対し、千葉県は業務停止命令9か月と、代表取締役への業務禁止命令9か月を出しました。

県内だけで相談は149件、契約者の平均年齢は77.7歳、平均契約額は約58万円。県が公表した5つの取引事例から、手口の全体像と「親の家で同じことが起きたらどうするか」を具体的に見ていきます。

📄 千葉県公表「主な取引事例」(PDF)はこちら →

千葉県がM’sクリーンに業務停止9か月――処分の概要

千葉県は令和8年4月17日、ガス給湯器の設置工事や床下配管工事などの住宅リフォームを訪問販売していた株式会社M’sクリーン(屋号:M’sメンテナンス、本社:神奈川県横浜市旭区)に対し、特定商取引法に基づく行政処分を行いました。

処分は3本立てです。事業者への業務停止命令と指示、そして代表取締役個人への業務禁止命令。令和8年4月18日から令和9年1月17日までの9か月間、訪問販売での勧誘・申込み受付・契約締結が禁止されます。

項目 内容
事業者 株式会社M’sクリーン(屋号:M’sメンテナンス)
本社:横浜市旭区上川井町/営業所:横浜市中区翁町
設立:令和2年5月11日
業務内容 ガス給湯器の設置工事、床下配管工事等の住宅リフォームの訪問販売
業務停止命令 9か月(令和8年4月18日〜令和9年1月17日)
訪問販売の役務提供契約の勧誘・申込み受付・締結を停止
指示 発生原因の調査・検証、法令遵守体制の整備、返金・解約の問合せへの誠実な対応を含む再発防止策を、業務再開までに役員・従業員へ周知徹底
業務禁止命令 代表取締役 村山守氏(個人)に9か月。停止範囲の業務を新たに始めること(別法人の担当役員就任を含む)を禁止

業務禁止命令が付いている点は見逃せません。会社を畳んで別会社で同じ商売を再開する「看板の掛け替え」を封じるための処分で、県が悪質性を重く見たことがうかがえます。

相談149件、平均契約額は約58万円・最高約401万円

県の消費生活相談窓口に寄せられた相談は、契約者が千葉県内在住のものに限っても次のとおりです(令和8年2月4日現在)。

年度 令和5年度 令和6年度 令和7年度 合計
相談件数 24件 121件 4件 149件

数字で目を引くのは契約者の属性です。契約者の平均年齢は77.7歳、最高齢は96歳。平均契約額は約58万円、最高契約額は約401万円にのぼります。

仮に149件すべてが平均額で契約していたとすれば、単純計算で8,600万円を超える規模です(あくまで試算で、県が公表した被害総額ではありません)。しかもこれは千葉県内の、相談に至った分だけ。実際の契約はもっと多いと見るのが自然でしょう。

認定された3つの違反行為(特定商取引法)

01

氏名等不明示(法第3条)

勧誘に先立って、事業者名や「契約の勧誘が目的である」ことを明らかにしなかった。

02

不実告知(法第6条第1項第5号・第6号)

補強の必要な破損がないのに不具合があるように告げて契約させ、クーリング・オフの申出にも事実と異なることを告げて妨害した。

03

重要事項不告知(法第6条第2項)

役務の種類・内容や契約解除に関する事項を、故意に告げなかった。

特に重いのが、クーリング・オフを申し出た消費者に「キャンセルできない」とうそをついて解除を妨げた点です。消費者が法律で与えられた「最後の逃げ道」をふさいだわけで、同じく家族を持つ立場からすると、ここがいちばん許しがたいと感じます。

県が公表した5つの取引事例――「ガス会社の点検」を装う手口

千葉県は処分とあわせて「主な取引事例」をPDFで公表しています。5件とも入口は「無料点検」ですが、相手に近づく方法や、そこから契約に持ち込む流れは少しずつ違います。以下、原文の言葉をできるだけそのまま引きながら紹介します。

事例1:「〇〇ガスさんですか?」に正面から答えない電話

最初の接触は固定電話でした。「ガス給湯器の点検時期です。ガス給湯器の点検に伺いたいのですが、いつがいいですか。」という電話に、消費者甲は「〇〇ガスさんですか。」と確認します。返ってきたのは次の一言でした。

「ええ。皆さんそうおっしゃいますよ。」
——千葉県「主な取引事例」事例1より

来訪した担当者は、給湯器は「いいものが付いているので交換しなくても大丈夫」としつつ、給湯管・給水管は「老朽化しているため、交換が必要です」と指摘。甲が「こんなに細いものを使って大丈夫なの。」と聞くと、「今は細いほうがいいんですよ。」と返され、「露出管交換工事」を依頼してしまいます。

契約書を作る段階で甲が再び「あなた、本当に〇〇ガスさんなの。」と聞いても、答えは「ええ。みなさんそうおっしゃいますけど大丈夫ですよ。」。甲が事業者名を初めて知ったのは、契約書面と名刺を渡されたときでした。

幸い甲は、その日のうちに名刺の番号へ電話し「クーリング・オフするから契約を白紙にしてください。」と申し入れ、契約を解除しています。違和感を覚えた時点ですぐ動いた、お手本のような対応です。

事例2:「先に署名と印鑑を」――説明なしで契約、翌日には粗雑な補修

乙の家にかかってきた電話は「この辺の地域でガス点検を回っています。」というもの。乙は「ガス会社も無料点検をしているのかな。」と思い、来訪を承諾しました。

点検後の指摘は「問題はなかったが、配管のカバーがボロボロなので取り換えた方が良い。冬になると凍ってしまうので。」。金額を尋ねると「〇万円くらいかな。」という曖昧な答えで、「管保護材巻き直し工事」の契約へ進みます。

契約書の「ご確認事項」については、担当者はこう言っただけでした。

「後で自分で読み直しておいて下さい。先に契約書に署名と印鑑を下さい。」
——千葉県「主な取引事例」事例2より

工事はその場で済まされ、担当者は作業後の確認もせずに帰宅。翌日に乙が見ると、給水管には補修テープが粗雑に巻かれているだけでした。乙はここで初めてガス会社と無関係の業者だと知り、消費生活センターの助言でクーリング・オフしています。

事例3:「地震で爆発するかも」と不安をあおり、解約は「できません」

丙のケースは、電話もなしにいきなり玄関に現れた訪問から始まります。担当者は「ガス会社から委託されて、ガス給湯器の点検に来ました。」と名乗りました。丙は数年前にガス会社経由で給湯器を交換していたため、委託業者だと信じ込みます。

給湯器を見るなり担当者が口にしたのは、「地震なんかで揺れて爆発するかもしれないですよ。」という言葉でした。「管だけなのに高いね。」という丙の疑問も「でも工事だから、これぐらいはするよ。」でかわされ、丙は「地震で爆発したら大変だから契約しよう」と署名します。

翌日、不信感を抱いた丙がキャンセルを申し出ると、電話口の男性はこう答えました。

「契約書を書いて印鑑も押したのでキャンセルできません。」
——千葉県「主な取引事例」事例3より

これは完全な誤りです。訪問販売なら、契約書に署名・押印していても法定書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフできます。丙は消費生活センターの相談員に教えられて初めて制度を知り、通知書を送って解除しました。

事例4:来るたびに新しい工事――「やってみろ」と叫んで立ち去る

5件の中で最も深刻なのがこの事例です。丁の自宅には「ガス設備定期点検のおしらせ」という封書が投函されていました。契約中のガス会社からの郵便だと思って電話したことが、すべての始まりでした。

点検に来た担当者は、スマートフォンで撮った給湯器の写真を見せて「こんなにボロボロですよ。」。丁は「交換しないと事故に繋がり、周りに迷惑を掛けてしまう」と考え、初日だけで「ガスホース交換工事」「保護テープ巻き直し工事」「瞬間湯沸かし器交換工事」の3件を契約します。

その後の流れは、典型的な「次々販売」です。

⚠️ 事例4で丁が契約させられた工事の流れ

  • 初回:ガスホース交換/保護テープ巻き直し/瞬間湯沸かし器交換(計3件)
  • 工事完了・現金払いの直後:「事故があってからだと危険ですよ」と給湯器交換工事
  • 次の来訪時:「給湯器に付いている配管も交換したほうがいい」「リモコンも交換しなくてはいけない」と配管工事
  • さらに:床下収納に数秒だけ頭を入れ「床下の配管もボロボロ」と住宅リフォーム工事

丁は業者と会うことが怖くなり、日頃から世話になっている施設職員に相談して、初めてガス会社と無関係の会社だと知ります。契約日から7日後、最後の工事だけでもとキャンセルの電話を入れると、「もう部品も発注しているので、キャンセルできませんよ。」と拒否されました。

翌日、施設職員と一緒に待ち構えた丁が「工事はしません。」と告げると、業者側の一人は「この時間からキャンセルできるならやってみろ。」と叫んで車で立ち去ったといいます。部品を発注済みでも、期間内のクーリング・オフは有効です。丁は施設職員の協力で消費生活センターに相談し、通知書を送付しました。

身近に相談できる第三者がいたからこそ止められた被害です。一人暮らしの親がいる身としては、読んでいて背筋が冷たくなりました。

事例5:床下点検から「基礎に傷20カ所以上」――ハウスメーカーが否定

最後はガスではなく床下です。担当者は「床下の点検で回っています。」と戊の家を訪問。数分覗き込んだだけで「ここの床下は湿気があるからよくない。」と床下調湿工事を勧め、戊は依頼しました。

工事当日、調湿剤を敷き終えた担当者は続けて「床下の基礎に20カ所以上傷が付いている。」と指摘し、〇〇万円の補修工事も契約させます。

ところが数日後、訪ねてきたハウスメーカーの職員の見立てはまったく違いました。

「この前、床下の補修をした時、補修する箇所は5~6カ所しかなかったはず。それもしっかり直してあるから、今になって20カ所以上の補修が必要になることなんてありえない。」
——千葉県「主な取引事例」事例5より(ハウスメーカー職員の発言)

さらに職員は、敷かれた調湿剤も「絶対数が足りていない。隙間が空いている。」と指摘。不要な工事を契約させられたうえ、実施された工事の品質にも疑問がついた形です。戊は業者から解除方法の説明を一切受けておらず、センターで初めてクーリング・オフを知って解除しました。

5つの事例に共通する「点検商法」のパターン

事例 接触方法 不安をあおる言葉 解約への対応
1 固定電話 給湯管・給水管が老朽化 当日に本人が解除
2 固定電話 冬になると凍ってしまう センター相談後に解除
3 突然の訪問(ガス会社の委託と称す) 地震で爆発するかも 「キャンセルできません」
4 「ガス設備定期点検のおしらせ」封書 事故があってからだと危険 「部品を発注済み」「やってみろ」
5 突然の訪問(床下点検) 基礎に20カ所以上の傷 解除方法の説明なし

並べてみると、流れはほぼ一本道です。「ガス会社」を思わせる接触で警戒を解き、無料点検で家に入り、素人には確かめようのない不具合を指摘し、その場で契約書を書く。5件すべてで、消費者が事業者の正体を知ったのは契約書や第三者の指摘によってでした。

「ガス会社の点検」を装う点検商法の4ステップの図解

契約してしまったら――損をしないための権利と対処法

クーリング・オフは「8日間」、妨害されたら期間が延びる

訪問販売の契約は、特定商取引法第9条により、契約書面(法定書面)を受け取った日から8日以内なら、理由を問わず無条件で解除できます。業者が「署名したから」「部品を発注したから」と言っても関係ありません。

さらに、今回のように業者がうそをついて解除を妨げた場合は、改めてクーリング・オフできる旨の書面を受け取るまで期間は進みません。「8日を過ぎたから手遅れ」とは限らないので、あきらめずに相談することが大切です。

訪問販売のクーリング・オフ期間の図解(8日間・妨害があれば期間は進まない)

01

書面か電子メールで通知

はがき(両面コピーを保管し、特定記録郵便や簡易書留で送付)が基本。電子メール等の電磁的記録でも通知できます。

02

支払ったお金は全額返金

事業者は受け取った代金を速やかに返還しなければならず、損害賠償や違約金も請求できません。

03

工事済みでも費用はかからない

工事後の解除でも工事代金を払う必要はなく、元に戻すよう無償で請求(原状回復)することもできます。

クーリング・オフ期間を過ぎていても、「必要のない工事を必要と偽られた」ような不実告知があった場合は、特定商取引法に基づく取消しを主張できる可能性があります。事例4のように次々と工事を契約させられた場合は、過量販売として1年以内の解除が認められる余地もあります。いずれも個別の判断になるため、自己判断せず消費生活センターに相談してください。

離れて暮らす親を守るために――家族で共有したいチェックポイント

今回の契約者の平均年齢は77.7歳。狙われているのは、私たちの親世代です。本人が「ガス会社の人だと思った」と言っている以上、「怪しい業者に気をつけて」という抽象的な声かけでは足りません。具体的なルールを決めておくのが一番の備えです。

⚠️ 親と決めておきたい5つのルール

  • 「ガス会社の点検」と言われたら、一度電話を切り(ドアを開けず)、検針票や請求書に書かれた番号へ自分でかけて確認する
  • 相手の電話番号や封書に書かれた番号には折り返さない(事例4はここから始まった)
  • 突然来た業者には、無料でも点検させない。床下・屋根・給湯器は特に要注意
  • 工事の話が出たら「家族に相談してから」と言って、その場では絶対に署名しない
  • 契約書や名刺をもらったら、すぐ子どもに写真を送る習慣をつけておく

たまの電話で「最近、家に業者が来なかった?」と一言聞くだけでも違います。事例4・5のように、第三者の目が入った瞬間に被害が止まっていることは、家族にとって大きなヒントです。

📌 この処分のポイントまとめ

  • 千葉県は令和8年4月17日、株式会社M’sクリーンに業務停止命令9か月と指示、代表取締役に業務禁止命令9か月を出した。
  • 認定された違反は、氏名等不明示・不実告知・重要事項不告知の3つ。クーリング・オフ妨害も含まれる。
  • 県内相談は149件。契約者の平均年齢は77.7歳、平均契約額は約58万円、最高は約401万円。
  • 手口は「ガス会社」を思わせる電話・封書・訪問から無料点検に入り、不具合を指摘してその場で契約させるもの。
  • 署名後も、工事後も、部品発注後も、8日以内ならクーリング・オフで全額取り戻せる。妨害があれば期間は延びる。

まとめ:「無料点検」は入口にすぎない

今回の処分で改めて浮かび上がったのは、無料点検そのものが商品ではなく、高額工事への入口として設計されていたという構図です。「ガス会社ですか」という問いをはぐらかし続けた事例1の応答は、その姿勢をよく表しています。

一方で、5件の事例はすべてクーリング・オフで解除に至っています。制度を知っていれば、たとえ一度契約してしまっても取り返せる。業務停止は来年1月で明けますが、似た手口の業者は他にもいます。この記事を、親御さんとの次の電話のきっかけにしてもらえればと思います。

よくある質問(FAQ)

Q. 工事がもう終わっていても、クーリング・オフで代金は返ってきますか?

A. 法定書面を受け取ってから8日以内であれば、工事後でも解除でき、支払った代金は全額返還の対象です。事業者は工事代金や違約金を請求できず、消費者は無償での原状回復を求めることもできます。

Q. 「キャンセルできない」と言われて8日を過ぎてしまいました。もう無理ですか?

A. 事業者のうそで解除を妨げられた場合、クーリング・オフ期間は進行しないとされています。事例3・4のようなケースは、期間経過後でも解除できる可能性があるため、早めに消費生活センターへ相談してください。

Q. 本物のガス会社の点検かどうか、どう見分ければいいですか?

A. 名乗った社名を鵜呑みにせず、いつも届く検針票や請求書に記載された連絡先に自分から電話して、点検予定があるか確認するのが確実です。相手が示した番号や封書の番号にはかけないようにしましょう。

Q. どこに相談すればいいですか?

A. 全国共通の消費者ホットライン「188(いやや)」で最寄りの窓口につながります。千葉県内なら千葉県消費者センター(047-434-0999、平日9時〜16時30分・土曜9時〜16時、日祝・年末年始を除く)でも相談できます。家族が代わりに相談することも可能です。

出典・参考資料

【免責事項】本記事は千葉県の公表資料をもとに作成したもので、処分内容・事例の記載は公表時点の情報です。被害額の試算は筆者による単純計算であり、公式な数値ではありません。個別の契約の解除・取消しの可否は事情により異なりますので、具体的な対応は消費生活センターや弁護士等の専門家にご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました