📅 令和7年(2025年)7月11日 | ⚖️ 最高裁判所第三小法廷 | 📂 電子計算機使用詐欺・窃盗被告事件
🔄 最終更新:2026年10月10日(Q&A形式に全面リニューアル)
⏱ 30秒でわかる結論
- 「引き出しただけ」でも詐欺の共犯になります。最高裁は、還付金詐欺の出し子にも詐欺(電子計算機使用詐欺)の共謀が成立すると判断しました。
- 詐欺の中身を知らなくても関係ありません。「犯罪のお金かもしれない」と分かって引き受けた時点で、共謀は成立しうるとされました。
- 結果は懲役4年。二審の「詐欺は無罪」を破棄し、一審の懲役4年を維持しました。
Q1. 出し子は何をしていた?報酬は50万円につき1万円
A. 闇バイトに応募し、ATMの近くで待機して、だまし取られたお金をすぐ引き出す役でした。
被告人の男性はインターネットの掲示板で「闇バイト」を探し、指示役から他人名義のキャッシュカードを受け取りました。平日の午前9時から午後5時まで、ATMの近くで指示を待つ毎日です。
報酬は引き出した現金50万円につき1万円。残りのお金はコインロッカーを通じて回収役に渡していました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | 2021年10月25日〜12月1日 |
| だまし取られた額 | 9回の送金で計773万1734円 |
| 出し子が引き出した額 | 26回で計722万9000円 |
| 引き出しまでの時間 | 送金から1〜16分後 |
計算すると、700万円以上を引き出して受け取る報酬はおよそ14万円です。わずかな報酬と引き換えに懲役4年という割に合わなさは、子どもを持つ親として真っ先に伝えたいところです。
Q2. 還付金詐欺はどんな手口だった?
A. 「還付金が受け取れる」とうそをつき、被害者自身にATMで送金させる手口です。
01
うその電話
指示役が「年金の還付金が受け取れる」と電話をかける。
02
ATMを操作させる
受け取りのつもりが、実際は指示役の口座へ送金させられる。
03
すぐに引き出し
待機していた出し子が、別のATMから数分で現金化する。
ここで覚えておきたいのは、自治体や年金事務所がATMの操作を求めることはないという一点です。「ATMへ行ってください」と言われた時点で詐欺だと判断して構いません。
Q3. 裁判はどう進んだ?一審有罪→二審無罪→最高裁で逆転
A. 二審でいったん「詐欺は無罪」になりましたが、最高裁が覆しました。
第一審 青森地裁八戸支部 2023年3月24日
懲役4年——詐欺の共謀も認定
電子計算機使用詐欺の共謀共同正犯と窃盗で有罪。
控訴審 仙台高裁 2024年1月30日
一審破棄——詐欺の共謀は否定
詐欺の具体的な内容を知らず、指示役との意思の連絡はなかったと判断。
上告審 最高裁第三小法廷 2025年7月11日
二審を破棄——一審の懲役4年を維持
出し子にも詐欺の共謀が成立すると判断。
Q4. なぜ「中身を知らない」のに詐欺の共犯になるの?
A. 「犯罪のお金を引き出すかもしれない」と分かったうえで引き受けたからです。
最高裁は、被告人が仕事を引き受けた時点の認識に注目しました。
——最高裁第三小法廷判決(Westlaw Japan 判例コラムより)
どんな詐欺かを具体的に知っている必要はなく、本件の還付金詐欺は「被告人が想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていた」と判断されました。ATMの近くで待機した時点で、指示役と暗黙のうちに意思を通じ合っていたとも認定されています。
さらに、だまし取ったお金をすぐ現金にする役割は、詐欺の利益を確保するうえで欠かせないとされました。末端の役割でも、詐欺そのものの共犯として重く処罰されうるということです。

Q5. 家族を守るために、今日からできることは?
A. 子ども世代には「闇バイトの重さ」を、親世代には「ATMで還付金は受け取れない」を伝えることです。
この判決は、2つの立場の家族に関わります。高額報酬につられて応募してしまう若い世代と、還付金詐欺の電話を受ける親世代です。自分も家族を持つ立場として、どちらも「うちは大丈夫」と思い込まないことが出発点だと感じます。
| 誰に | 伝えたいこと |
|---|---|
| 子ども・若い家族 | 「高額・即日・簡単」の募集は疑う。「引き出すだけ」でも詐欺の共犯として実刑になりうる。 |
| 親・祖父母 | ATMで還付金は受け取れない。「ATMへ」と言われたら電話を切る。 |
| 家族全員 | 迷ったら家族に連絡し、警察相談専用電話「#9110」に相談する。 |
⚠️ もし子どもが闇バイトに関わってしまったら
- 指示役から脅されていても、一人で抱え込ませない
- すぐに警察に相談する(警察は闇バイトからの離脱や保護に取り組んでいる)
- 早い段階で弁護士への相談も検討する

よくある質問(FAQ)
Q. 出し子は「窃盗」だけで済むのでは?
A. 二審はその立場でしたが、最高裁は詐欺(電子計算機使用詐欺)の共謀共同正犯も成立すると判断しました。窃盗の報酬だと思っていたという事情も、共謀を否定する理由にはならないとされています。
Q. 「詐欺だとは知らなかった」と言えば罪は軽くなりますか?
A. 犯罪で得たお金を引き出す可能性を分かって引き受けていれば、具体的な手口を知らなくても共謀は成立しうる、というのが今回の判断です。「知らなかった」は通りにくいと考えておくべきです。
Q. 還付金詐欺の電話がかかってきたら?
A. その場で電話を切り、家族に連絡してください。判断に迷うときは警察相談専用電話「#9110」に相談できます。
📌 この判決のポイントまとめ
- 最高裁第三小法廷は2025年7月11日、還付金詐欺の出し子に電子計算機使用詐欺罪の共謀共同正犯が成立すると判断した。
- 二審の仙台高裁は詐欺の部分を無罪としていたが、最高裁はこれを破棄し、一審の懲役4年を維持した。
- 詐欺の具体的な内容を知らなくても、犯罪で得たお金を引き出す可能性を認識して引き受ければ、共謀は成立しうる。
- 家族では「闇バイトの重さ」と「ATMで還付金は受け取れない」を共有し、迷ったら#9110へ。
まとめ:「知らなかった」では済まされない
出し子は、詐欺グループの中で使い捨てにされやすい立場です。それでも最高裁は、その役割を詐欺の完成に欠かせないものと見て、共犯として裁きました。
数十万円の報酬のために、人生を大きく狂わせかねない。子どもにも親にも、この判決を一つの「話のきっかけ」として家族で共有しておくことが、いちばん手軽で確実な備えだと思います。
出典・参考資料
- 第356号 電子計算機使用詐欺罪の共謀共同正犯~最高裁第三小法廷令和7年7月11日判決~(Westlaw Japan 判例コラム)
- 「出し子」の共謀を認定 電子計算機使用詐欺の無罪破棄―最高裁(時事ドットコム)
【免責事項】本記事は、公開されている判例解説および報道をもとに作成したもので、法的助言を目的としたものではありません。具体的な事案については弁護士等の専門家にご相談ください。
書き手:kota(カオスな世界 管理人)|判決文や公的資料などの一次資料をもとに、家族と暮らしを守る視点で解説しています。



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