「かわいい」「下着見えてるよ」はセクハラ?東京地裁が違法と認定も賠償は22万円だった理由|請求554万円との差

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地裁判決セクハラ慰謝料請求労働問題職場の言葉づかい

📅 令和7年(2025年)10月23日判決 | ⚖️ 東京地方裁判所民事第11部 | 📂 令和5年(ワ)第25623号
🔄 最終更新:2026年10月10日(Q&A形式に全面リニューアル)

⏱ 30秒でわかる結論

  1. 「今のかわいい」「下着が見えてしまうよ」はセクハラと認定されました。係長の7つの言動のうち5つが違法とされています。
  2. それでも賠償は22万円。請求554万円超に対し、認められたのは約4%でした。
  3. 理由は「因果関係」と「会社との和解」。うつ病等の発症との因果関係は認められず、会社が払った解決金70万円も考慮されました。

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Q1. どんな職場で、何があった?

A. 宅配便大手の営業所で、営業課の係長が、別の課の女性社員に半年あまりにわたって容姿や服装に触れる言動を繰り返しました。

原告の女性は平成27年に入社し、カスタマーサービス課で顧客対応を担当していました。被告の男性は営業課の係長です。発端は令和3年4月頃、係長が女性の自宅住所を尋ねたことでした。

同年11月末、女性は出勤時に涙が出るようになり、所長と上司に事情を打ち明けます。翌月には複数の医療機関でうつ病・適応障害などと診断され、欠勤を経て休職に入りました。

令和5年10月、女性は会社ではなく係長個人を相手に東京地裁へ提訴しました。会社とは訴訟の途中で、解決金70万円を支払う内容の和解が成立しています。

Q2. どの言動がセクハラと判断された?

A. 7つの言動のうち5つが違法、1つが適法、1つは事実として認められませんでした。

言動 内容 判断
① 電報便 「祝」の表紙に侮辱的な差出人名で自宅へ郵送 違法
② 「今のかわいい」 驚いて声を上げた女性への冷やかし 違法
③ 下着の指摘 前屈みの女性に「胸元が……はだけて下着が見えてしまうよ」 違法
④ 体型への言及 「体型良いよね。俺なんかガリガリだよ」 違法
⑤ 「ちゃん」付け 約半年間にわたって継続 違法
⑥ 「癒して」 性的な連想をさせるものではないと判断 適法
⑦ 「好きだよ」 係長が明確に否定 事実不認定

判断の物差しは一貫しています。業務上の必要性がなく、相手に不快感や羞恥心を与えるかどうかです。下着の指摘について係長は「服装への注意だった」と反論しましたが、裁判所は指摘のしかたそのものに問題があったとして退けました。

「強い不快感や羞恥心を与えるものであったといえる」「このような強い不快感や羞恥心を与えるような方法をとる業務上の必要性は見出し難い」
——東京地方裁判所判決より(下着に関する発言について)

「ちゃん」付けのような日常的な呼び方も、続けば独立したハラスメントとして評価される点は、管理職の立場にある人ほど覚えておきたいところです。

係長の7つの言動について違法5つ・適法1つ・事実不認定1つとした東京地裁の判断を示す図解

Q3. 違法なのに、なぜ賠償は22万円だけ?

A. 体調悪化との因果関係が認められず、会社からの解決金70万円も考慮されたからです。

女性は休業損害や治療費などで200万円あまりを請求していましたが、すべて0円でした。裁判所は、うつ病等の発症には顧客対応のクレームによるストレスや私生活上の負担も相当程度寄与していたとみて、係長の行為との「相当因果関係」までは認めなかったのです。

「被告のハラスメント行為と原告のうつ病等の発症との間に相当因果関係があるとは認められない。」
——東京地方裁判所判決より

慰謝料も300万円の請求に対して20万円でした。会社が払った解決金70万円には、精神的苦痛を慰謝する趣旨も含まれていると見られたためです。

項目 請求額 認容額
休業損害(令和4年) 84万8,732円 0円
休業損害(令和5年1〜8月) 73万6,748円 0円
賞与減額分(2年度分) 各9万円 0円
治療費・薬剤費・通院交通費・文書料 27万6,986円 0円
慰謝料 300万円 20万円
弁護士費用 50万4,247円 2万円
合計 554万6,713円 22万円

訴訟費用も20分の19が女性の負担とされました。行為の違法性を証明できても、その先の損害との因果関係がもう一段の壁になる――損をしないためには、この構造を知っておくことが大切です。

Q4. 自分や家族が被害にあったら、何をすればいい?

A. 言動の記録と、体調の記録を分けて残し、早めに相談することです。

今回の判決からわかるのは、違法性と損害を別々に証明する必要があるということです。妻や娘が職場で同じような目にあったら、と考えると、何を残しておけば後で困らないかを家族で知っておく意味は大きいと感じます。

01

言動を記録する

日時・場所・言われた言葉・周りにいた人をメモに残す。

02

体調の変化も記録

いつから眠れない・涙が出るのか、受診の記録とあわせて残す。

03

早めに相談する

会社の相談窓口、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、弁護士へ。

⚠️ 管理職・上司の立場で気をつけたいこと

  • 容姿・体型・服装への言及は、注意や親愛のつもりでも、業務上の必要がなければ違法になりうる
  • 服装を注意するなら、同性の上司から伝えるなど方法にも配慮する
  • 会社が和解しても、加害者個人への請求は別に起こされうる
セクハラ被害で損をしないために残したい言動と体調の記録、相談先、賠償が絞られた理由を示す図解

よくある質問(FAQ)

Q. 「かわいい」と言っただけでセクハラになりますか?

A. 一言で必ず違法になるわけではありません。今回は、驚いた女性への冷やかしで業務上の必要がなく、不快感や羞恥心を与えたとして、違法と判断されました。

Q. 会社と和解したあとでも、加害者本人を訴えられますか?

A. 今回の女性は会社と70万円で和解したうえで、係長個人への判決を得ています。ただし、会社からの解決金は慰謝料の額を決める際に考慮されました。

Q. 休業損害や治療費はどうすれば認められますか?

A. ハラスメントと体調悪化との因果関係を示す必要があります。今回は、ほかのストレス要因もあったとして否定されました。受診の時期や医師の所見などの記録が重要になります。

📌 この判決のポイントまとめ

  • 係長の7つの言動のうち5つが「社会通念上許容される限度を超えた違法なハラスメント」と認定された。
  • 判断基準は、業務上の必要性がなく、不快感や羞恥心を与えるかどうか。
  • 請求554万6,713円に対し、認容は慰謝料20万円と弁護士費用2万円の計22万円。
  • うつ病等との因果関係が否定され、会社との和解金70万円も慰謝料額に影響した。

まとめ:金額だけで判決の意味は測れない

請求の4%という数字だけを見ると、訴えた側の負けにも見えます。けれども、係長の言動の違法性そのものは裁判所によって公式に認められました。

職場の何気ない一言が、どこで違法になるのか。言う側も言われる側も、その線引きを知っておくことが、自分と家族の働く場所を守ることにつながると感じる判決でした。

出典・参考資料

【免責事項】本記事は、公開されている判決文をもとに作成したもので、法的助言を目的としたものではありません。具体的な事案については弁護士等の専門家にご相談ください。

書き手:kota(カオスな世界 管理人)|判決文や公的資料などの一次資料をもとに、家族と暮らしを守る視点で解説しています。

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